実際の臨床で、感じる事
そしていつしか、分らない所は触れずして、いつの間にか全てが、細菌説で解決されている気がするのです。
僕が、歯周病専門医であるからこそ、少し違う世界も紹介してみたく思ったのです。そして、この前に記した図を理解できない先生が、あなたの主治医だとしても、決しておかしいと思わないでください。
何故なら、僕が歯周病専門医だから理解できるに過ぎません。
歯周病専門医として勉強したから、知っているにすぎないのです。
そして、もし仮に、歯周病専門医でもなく知っているのであるのならば、それは素敵な先生だと、逆に僕は、嬉しく思います。
この図で、特徴的な言葉、あるいは、特異な言葉はモレキュラーミミクリィ(molecular mimicry)という言葉かと思います。
話を変えます。
たまに、難治性の歯周疾患で、来られる患者がいます。
ブラッシング指導を、かわいそうな回数教育されています。
かわいそうなぐらい、歯茎のケアーを、天文学(?)といいたくなるぐらいの回数、通院されていた患者もいます。その時間の、経済的負担を鑑みると、悲しくなります。
しかし、歯石が無いにもかかわらず、プラークコントロールが出来ているにも拘らず、歯茎の腫れ、歯の動揺が収まらない患者に出くわす事があるわけです。だから、悩むわけです。そして、非力かも知れませんが、一寸、違った見方も紹介してみたく思ったのです。
毛色を少し変えましょう。
歯周治療の、整理を図ってみましょう。
まずは、歯周疾患の所見でも記載してみましょう。
興味のある方だけ、読んでください。
<歯周疾患の特徴的所見>
・歯肉の炎症(発赤・腫脹・浮腫・出血・排膿)
・歯石の形成
・歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝の深さが深くなる)の形成
・歯の動揺
・歯の移動
・歯槽骨(歯を支える骨)の吸収(破壊)
・口臭
などが、あげられます。
そして、細菌クンの活躍で、全てが始まるAという世界観であるのならば、その治療法は、下記のようなチャートで表現される筈です。

となるかと思います。私どもも、実際、こんな流れで行う事が多いです。これは、歯周治療ガイドラインとでも言えばよいのでしょうか?歯周治療の、王道の流れです。
問題は、それが、使えない場合です。
この黄金の、方法が適応されない場合です。
もし、これを読まれたあなたが、過去を振り返り、ああ、なるほど、だからこうやって治療していたんだ、と思われたら、この方法は、まさに王道の方法と、よく理解をしていただけるかと思います。
しかし問題は、先にも書いた通り、それで治っていない場合です。
細菌が諸悪の根源なら、原因を断てば治るはずです。
ちょっとした例えをいれてみます。
適正な例えかわかりませんが、風邪を例えに出したいと思います。
咳が、風邪のせいで出るとします。咳止めは効くはずです。
ですが、実は、別の事が原因でも、咳は出ます。
例えば、肺がんでも咳はでます。
例えば、肺炎でも咳はでます。
例えば、結核でも咳はでます。
でも、おそらくですが、風邪の咳止めでは治りません。
その目で、細菌が根底の原因でなければ、あなたの歯周疾患は、治らないかもしれません。免疫応答はあるわけですから、続くかもしれないわけです。進行するかもしれないわけです。