専門医アキヤマのくすり(その1)

本日は専門医アキヤマのくすりにご入場いただきありがとうございました。
ロックな秋山では相当ロックンロールで走ってみましたが、歯周病専門医として歯周病をどうとらえているか、そんな思いを知っていただければと思います。
まずは歯周病のパラダイムシフトについて、触れてみましょう。

最近、盛んに歯周病の恐ろしさを週刊誌の特集でもとりあげられています。そして、同時に関心が高まっていると思います。
1990年代、アメリカでは ” floss or die ?” といったキャッチコピーが流行りました。しかし日本は、まだその時を迎えていませんでした。

私はアメリカのUCLAの教授陣のインプラントを含めた歯周病学セミナーを受ける好機に恵まれたことがあります。臨床医の世界ではトップ5%にいるといわれる彼らの歴史観、世界観に触れながら、現代歯周病学について学ぶことができました。

そこで、歯周治療の歴史を含め、学びの場に身を置くことができました。そして、彼らドクターがどれだけの誇りと真心を持って患者に接しているのか、そしてその為には、知識と技術がどれだけ必要なのかを知る意味で、心地よい新鮮な体験ができました。


一番、そこで思った事、いえ、自分に約束した事は、学びの場で触発されたのかもしれませんが、“人として”というこだわりだった気がします。良い機会を経る事ができたからこそ、これからも気持ち新たに私は臨床に生かしていきたいと思っております。

さて、有史以来、様々な形で人類を苦しめてきた歯周疾患ですが、多くの先人たちの研究により、1960年代になって、口腔内に存在する細菌性プラーク(歯垢)が、炎症の原因であるといわれました。
いわゆる“オーラルハイジーン”の時代です。
ところが臨床的な観察が進むにつれ、歯と歯肉を磨いているににもかかわらず、歯周病が進行してしまう!といった事例や、プラークがあまり無くても歯周病がひどい人が報告されるようになります。そこで、研究者たちはプラークというものをもっとアグレッシブに研究するようになりました。

1970年代になると、歯周組織の細菌を分離、培養する技術が発達し、プラーク中に存在する600種類以上のバクテリアのなかから、ある特定の細菌が注目されるようになりました。

歯周疾患は、確かに感染症です。ところが事は、結核菌と結核のような図式ではありません。
1980年代、ある特定の地域(歯を磨く習慣のない地域)を対象にした疫学的研究(調査)をしたことがあります。すると歯周病に罹患していない人から歯周病が重度な人まで様々な分布をしていたのです。このことから、プラークだけでは、炎症の重症度を説明するには困難であることがわかってきました。

その後、注目されたのが宿主つまり、私たちの体の細菌に対する反応を、分子生物学的手法によって事細かに研究するジャンルに移行しはじめます。いわゆる“宿主 vs バクテリア”の時代です。
その結果、歯周疾患は細菌による破壊とそれに対する私たちの体(宿主)の防御反応の結果引き起こされているということがわかりました。だから“個人差”というものがあり得るこになります。
そして今日に至っては遺伝子レベルでの研究が主流となっています。私たちの体の中で、あるいは歯肉の中で繰り広げられる現象について日々、研究が蓄積されているのです。

ここまで、歯周疾患がどのように時代の移り変わりとともにとらえ方が変わってきたのか、大きな変化をまとめてみました。この移り変わりに伴い、治療法も大きく進歩する事になるのです。

少し、紹介をしてみましょう。

臨床的にみると、1980年以降、組織再生誘導法(guaided tissue regeneration:GTR)やエムドゲインの登場などにより、歯科医は歯を残そうとする行為をより積極的に取り組みはじめます。その流れは今も変わりはないように思います。

一方で、インプラントの台頭によって、歯を残すというその考え方も変わりはじめました。たとえば、アメリカの、NIH(National Institutes of Health、国立衛生研究所)という、日本でいえば厚生労働省に似た機関の提言では、欠損の修復においてはインプラントを推奨することが、インフォームドコンセントにおいては第一選択に上げられます。

つまり、問題のある歯は残さずに抜歯してインプラントを埋入することが現段階では予知性が最も高い治療法ということになっているのです。

確かにインプラントにするにあたって、より良い条件で行う為には、骨が十分にあるうちに抜歯するというのが一つの選択肢になり得ます。それは事実です。
僕は、別の見方も、持っていますが・・・。

ここでデンタルサイクルというものを紹介させて下さい。

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